ひろいの徒然ブログ

アパレル生産管理自営の日々や子育て

【アパレル生産管理が語る 工場の本音】1なぜ小ロットが敬遠されるのか

おはこん失礼。ひろいです。

今回は新シリーズで書いてみようと思ったことがありますので、表題を作りました。

今日本の縫製現場は消えそうな事態に直面してます。もちろん0にはならないと思いますが極めて少なくなります。なぜこんな事態になっているかというと、生産数とコストバランスが崩壊しているからです。

以前にZOZO前澤さんが服の原価についてTwitterでこぼしたことがありました。

 

www.hiroitoshoten.work

 その記事はこちら。ここでも少しコストは言及してますが国内の現場は大ロットだとコストをやたら安く設定され、それが仮に小ロットになったとしても最低限のコストUPも受け入れてもらえない現状が未だにあります。前澤さんのつぶやいたコスト問題は実際あるところも存在します。

大ロットを受ける工場はそれなりに設備・人数が必要です。それを維持するには当然仕事が必要になります。かといって年間を通してその規模の工場を閑散期まで仕事を入れてくれるお客さんはほぼいないといっても過言ではないでしょう。

そういう状況を下手にとって仕事を出す側は閑散期は安く縫わせる。人件費は変わらないのに、経費は同じようにかかっているのに。繁忙期に閑散期を補填できるほどの売上は確保できていないのに。それでは工場が経営できなくなるのは当たり前のことです。

 

ちょっと横道に逸れてしまいましたが、このような問題点も踏まえて表題の小ロットはなぜ敬遠されるのかを書きます。

 

1採算が合わない

2生産効率が悪い

3少人数(2.3人)の工場がない

4クオリティの要求が高い

5生産時期の考慮がない

 

他もありますが、概ね5つ上げました。それぞれについて書きます。

1採算が合わない

第一にこれが来ます。採算が合わないというのは、工場が提示するコストに対し先方が受け入れてもらえない。ということです。

仮に縫製や裁断に関わる工員が10名いたとします。

工員は10名 時給1000円として一日8000円×10名=80000円

一日80000円以上の採算が上がるように生産しないといけなくなります。

※経費や経営者の給料は今回見てません。

※専属の工場としてです。他社も受ける工場では到底無理な計算です

シャツ1枚を3000円で依頼を受けるとします。

80000円÷3000円=26,66666枚 つまり日産27枚作らないといけないわけです。

実際に1日では裁断などのことを考えると基本不可能なので裁断で1日は余剰になります。

となると2日分160000円÷3000円=53、3333枚

2日で54枚つくらないといけないです。

定番的にやっているシャツなら10名いればぎりぎりどうにかなるかもしれません。

これを基準に考えてみてください。

 

54枚を2日間で縫うのが160000円

10枚としたら。。。??

160000円÷10枚=16000円

これが最低限掛かるコストです。シャツに16000円だせますかね、メーカーさん。

僕の経験上だしてきたメーカーは存在しません。

なので極小ロットは少人数の現場でないと経費で赤字になるのが確定のものとなります。

3名程度で2日間で出来たと仮定して時給が同じ条件として

1000円×8時間×3名×2日÷10枚=4800円

これで現実的です。時間がかかれば当然もっとコストUPです。

 

つまりそこそこ工員を抱えている現場では極小ロットは基本コストの合わないもの。と判断されます。見積もりしてくださいと言われて出しても 高い の一言が返ってくるのがほとんどではないでしょうか。

勿論10名いれば10枚のシャツだけ対応してるわけではないですが、そこは今回は飛ばします。10枚×6デザインを2日でUPとなればそれこそ不可能ですからね。

 

2生産効率が悪い

縫製は人が行うものです。裁断も然りです。

同じものを多くやっていくうちにペースが上がって行きます。

数が少ないということは慣れる前に仕事が終わってしますので生産効率が上がるという見込みは基本的にありません。

ここから工場の見積もりを時間的に短縮して値切ることは基本不可能です。

※コスト下げたければ裁断を自分で行って工場に投入するなどの手段が必要です。

3少人数の現場がない

根本的な問題です。

少人数の現場は今ほとんどなくなりました。あっても高齢化しているところや、設備が整ってないところが殆どです。工場というより内職に近いものしかほぼありません。

実際に残っているところは元々少量のコレクションやプレタポルテの高単価なものを縫う技術の高いところですので、基本工賃が量産の工場とは違ってきます。

3000円のシャツという時点でまず弾かれます。

4クオリティの要求が高い

これ自体はべつに間違ってません。商品は良いものであるに越したことはないのは当たり前のことです。ですが同じ生産枚数として

10000円のシャツと

3000円のシャツで同クオリティのものを国内で縫うというのは不可能です。

工場は時間でコストを出しますので、10000円ならそれだけ時間をかけることができて3000円だとそれだけ時間をかけたくないのです。

見積上合わないものにクオリティを求められても困ってしまうのが本音だと思います。

5生産時期の配慮がない

最後にこれです。

アパレルの生産時期は基本バッティングします(同時期にかぶってきます)。

専属の工場だとしても1時期に集中するとなかなかすべてを納期通りにUPさせるのは至難の技です。怪我や病気で欠員が出ることもありますので。ましてや外注の工場で数ブランド対応してるとなれば(ほとんどがそうだと思います)確実に全部を希望通りにはUP出来ません。

そうなると生産効率の良いもの 数の多いものやコストの合うものを優先します。なので納期は極小ロットのものは基本後回しか、仕事と仕事の隙間に出来た時間で行います。となると納期は不安定なものになります。

メーカー側もデザインやパターンのUP 季節のものなので時期の問題は抱えていますが極小ロットのものは繁忙期を避けないとコスト以上に縫うこと自体をできるタイミングがない と現場に言われてしまうんです。

100枚分の材料を先行投入はお金が先に必要なので、厳しいのはわかりますが

10枚くらいの材料は先行投入して落ち着いている時期に対応してもらうなどが必要です。かといって落ち着いている時期だから安くなるは間違いです。納期が安定するが正しいですので勘違いの無きように。

 

 

 

以上5項目から小ロットが工場に敬遠される理由を書きました。

あくまで一例です。うまく工場さんとの関係を保って極小ロットも織り交ぜているメーカーさんも存在します。ですが極小ロットのみで工場に依頼を出すのであれば、それなりのコストやタイミングを考慮してあげてください。

物理的に作れないということはなく、合わないからやらない

これがほとんどの原因です。

それを取り除けば極小ロットだろうが遠慮なく工場に依頼かけていけば文句なしです。

 

 

長くなりましたが参考になればこれ幸い。

ではまた。