おはこん失礼。ひろいです。
今回は先日Twitterで多くの意見を頂いた中で気になるワードがでたので
ちょっと豆知識として書き残します。
アパレル業界にいらっしゃる方でメーカーや工場で数年くらい働いているといままで聞いたことのない言葉に出会います。
振り屋
名前がちょっとカッコ悪いですが、その内容をよく表しているので未だに聞くことがある言葉です。違う言い方をすれば生産請負業者とか 横文字で海外ではエージェントとか言います。
国内では正直あまり良い扱いされないですが、海外では普通に重宝されているような職種です。理由も踏まえて説明を書きます。
アパレルでの振り屋とは
ざっくり言うと 縫製などの仕事を確保して それを工場に振り分けるお仕事です。
つまり営業がいない工場にとっては仕事をとってきてくれる存在で
工場を知らない または 少数しか現場を知らないだとか ジャンルによっては知らないブランド側からは工場のかわりに仕事を依頼できる人です。生地から手配したり 縫製だけ 加工だけなど多岐に渡る仕事の中身があります。
商社の縫製生産部門の営業さんがこういう動きをされてます。個人や中小の企画会社でも似たような動きをされるところもあるはずです。
簡単にまとめると
工場とブランドの間に立ち 仕事を振り回す方 です。
その存在価値とは
日本で振り屋ですと言って営業にいくと基本的にメーカー側からはいい顔されないことが多いです。それには理由があります。
上に書いたように 振り屋さんは工場や加工場の営業を代行していて、メーカーにとっては工場や生地メーカーの代わりになってくれるので本来は各社の手間を大幅にカットできるので重宝される存在です。
なのに振り屋ですと伝えると営業で会ってももらえない場合があります。理由は
ただの利益のピンハネだと思われている
ことが原因です。
実際振り屋さんの中にもいろんな人がいて、優秀な人は工場とメーカーどちらの手間もカットできるので大変で重宝される仕事のはずですが、その中にはピンハネと思われても仕方ない人が存在します。しかもそちらのほうが数が多い。それゆえに日本での振り屋というポジションはイメージが良くないことになっています。海外ではそうでもないということは海外の振り屋さんは優秀な方が多いのだろうと思います。
優秀な振り屋とは
工場側とメーカー側でちょっと変わりますがまとめて書く事にします。
まず第一に
知識があること
縫製に関する知識・生地などの素材知識・コスト感覚の知識
これらを持っているかどうか。専門の人には当然負けてしまうにせよ一通りのことは理解や説明できる状態の知識量は持っている人です。商品のクオリティに直結します。
コミュニケーション能力や交渉力
工場のクセの強いじっちゃんやおばちゃん達、今は海外研修性も多いです。その人たちに仕事を依頼し内容を適切に伝えられるか。
メーカーサイドとも同様に良い関係性を築ける人かどうか。コストの交渉もあります。何でもかんでもほいほい受けてる人は現場をぶち壊すタイプです。
フットワークの軽さ
純粋な振り屋さんであれば、ということが前提になりますが、そうであるならばフットワークは武器です。
必要な時に必要な場所へ さっと 動ける。これは大事なスキルです。
あと連絡の取りやすさもここに含まれます。現場は極力作業時間を削られたくないのが本音ですので、その代わりを対応してくれることも重要です。
ネットワークの保有量が多い
これはかなり重要で、1件の現場に仕事を依頼したとしたら そこがコケるとどうしようも無くなります。ネットワークの多い人であれば急な問題も多くの方法で解決できる可能性が高いです。人脈こそその人の武器です
服やファッションがすきであること
おしゃれとかだけでなくファッションが好きである人は、熱意がどこかに生まれるので良い仕事をしてくれます。これは結構重要です。
お金を稼ぐことは当然仕事なので必要事項ですが、ファッション好きでもなく稼げるからやってますという人の場合は正直問題が発生した時に関係が壊れることが多いイメージです。経験上ですが。
インターネット普及前は工場の人は本当に営業力も情報もなく、かなりコストを叩かれていた事実があります。そこで荒稼ぎした振り屋さんも多いです。(60代~70代くらいの方なら分かるかもしれません)
おすすめ出来ない振り屋さん
上記の逆を突っ走る人です。
いるの?そんなひと。と思われるかもですが居ます。しかも結構な数が。上記がありますのでこちらは簡単に書きます
知識・経験が希薄
仕様書やパターンを見れないので、仕様の確認やパターン確認が人任せ
コミュニケーション能力が乏しい
交渉はほぼせず、この値段でこの数でということだけで合う工場を探す。いざ納期が間に合わない時の値引き等はすべて工場負担にしてくるタイプです。
フットワークが重い
自分では動かない。荷物もメーカー⇔工場で直送やりとりばかりになりがち
材料チェックもしてないので、各種対応が後手後手になります
ネットワークが少ない
そこまで多くの現場をしらない。振り屋から振り屋へ仕事を回しているようなタイプ
ファッションや服にさほど興味がない
熱意はなく表面上の利益・納期の管理のみで話が終わるタイプです。
+
自身のことを振り屋と言わない
これは結構まずいです。工場ですとか生地屋ですという人が実際にいます。
この手の人はお客様の展示会などで 生地屋さんが直接先方と話す機会などがあるとややこしいはなしになります。
うちは〇〇さんから生地かってます(メーカーさんの発言)
うちは〇〇さんに生地売ってます(生地屋さんの発言)
〇〇さんという振り屋さんの立ち位置がおかしくなります。こういうことはちょっと頂けない。
僕の場合だと工場の生産管理でもありますが8人前後の小規模工場なので
仕事としては振り屋もやっています。自社で出来ない縫製方法は外注したり、プリントや刺繍は専門の場所へだしてます。プレスに関してもきっちり仕上げたい商品は専門店へ依頼してます。
うちの中でできることは裁断・縫製・軽い仕上げプレス・ホールやドットのまとめ加工・水洗い この程度です。縫製に関しては社内ではデニムの2本巻きや3本巻はできません。
中で出来ないことは事前にお伝えしているのが現状の対応です。
こういった負の面を多くもっている振り屋さんが多いので、国内で振り屋さんの立場は軽く見られたり不必要に見られることが多いです。
ですが良い面が多い振り屋さんはなくてはならない職種でもあります。
正直ブランドと現場が1対1でやるには相当のスタッフの確保がブランド側の負担になる。そこを省けると考えれば必要性は明白で、工場を1件のブランドで支えられるかというと、よほどの大手でないと不可能。どちらにとってもメリットがある存在足り得るお仕事です。
負の面が多いかも知れないと思った場合は、同業者の知り合いにでも相談してみてほしい。必要のない振り屋が減れば、その立場もエージェントという扱いになると思います。
あと振り屋を介するメリットとしては、工場は仕事が途切れることを嫌います。直接工場とブランドが仕事をするのがお金の面だけ見ると無駄なく見えますが、継続して仕事をいれ続けることが出来るかというと中小ブランドではきついです。振り屋は何件も案件を抱えていることが殆どで、そういう意味で現場と継続性のある状態にあるのでスポットでも仕事が流れやすい状態を維持できる強みがあります。
逆に言うと工場を1社でキャパを埋めることができるブランドであれば振り屋は必要なくなります。ただどんな大手にもスタート時点では小さい取引のスタートラインがあるので、その時からの仲間として手を取り合い続けることも当然あります。
実際に直接依頼するほうが高い場合も存在します。
例で言うと
シャツ30枚をAさん(ブランドの人)が工場に直接頼んだところ 納期は2ヶ月 コストは6000円と言われた。
シャツ30枚をBさん(振り屋)が工場に頼んだところ 納期は1ヶ月 コストは4000円といわれた
こういう差が実際出てきます。
※閑散期の対応や手間が省けると単体のコスト差は出ます。つまりAさんは年に数回の取引ですがBさんは年間通して安定した仕事を供給しています。
そういう状態にに近いプラットフォームも出てきていますよね
シタテルさんやnutteさんなど。(使い方次第では面白いと思います)これらは直接繋ぐことで無駄を減らしていますが、当然プラットフォームを使用すること そのノウハウなどを利用するのであたりまえに プラットフォーム側も利益が生まれるように出来ています。当たり前です。本当の意味での直接ではありません。
そのあたりの価値を見極めて取引をしていただければと感じましたので
今回のブログを書きました。参考になれば幸いです。
ではまた。