ひろいの徒然ブログ

アパレル生産管理自営の日々や子育て

【アパレル工場のコストがなぜ合わなくなり、納期がズレるのか】要因の一つ

おはこん失礼、ひろいです。

今回はこの時期にもよくある(あっちゃだめだけど)納期に関わるお話。

そこからコストが合わなくなってきている(メーカ側から言うと高くなってきている)要因を書いてみます

前はこれくらいでやってたのに、最近高いなあと思う人が多かったので。

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ピンキリありますが納期の管理の方法はだいたいどこも同じような

形だと思います。

・月産の能力を知っている(逆に金額でいくら水揚げを出さないといけないかを知っている)

・何が縫えるか把握している(軽衣料のみなのか・重衣料のみなのかなど)

この2つをベースに

・優先順位をつける

・スケジュールをカレンダーに記入して管理

 

だいたいこの4つを確認しつつで仕事を受けていきます。

前置きの条件として

金額ベースで300万加工費を稼がないといけない軽衣料の布帛現場を例にとると

3000円のシャツなら1000枚

というふうに数量の損益分岐点が1000枚となり、それよりこなせれば会社に内部留保が生まれて設備投資などができることとなります。

だいたい8人~10名くらいの工場の目安がこれくらいです。

シャツを1枚作るのに一人あたり一日5枚くらいでこの生産量がぎりぎりこなせます。

 

これを基準に考えるとします。

 

実際日本の工場は1社の1アイテムだけを縫うことは少ない状態です。

1社1アイテムで1000枚こなすことができればベストではありますが現状の生産は

小ロットから中ロットがメインとなっており、1000枚の数を1アイテムで消費することは殆どなく数種類のデザインが混在して総量をこなすことになります。

 

注文がこれくらいつきました

A社のデザインを50枚×5デザイン 250枚

B社のデザインを100枚×4デザイン 400枚

C社のデザイン 30枚×15デザイン 450枚

合計1100枚  24デザイン

※本来は枚数やデザインで単価変わりますがややこしいので一律にします

 

なかなかリアルな例だと思います。(本来はシャツだけでなく スカートやワンピースなども混ざる)

 

追記しておくと1デザインを1000枚こなすとなれば問題ない理由としては

裁断やまとめ(ボタンなど)作業にプレス仕上げが 一回で済ますことができるという点があります。

 

さてここからが納期がずれる原因です

先に上げたように1ブランドの1デザイン1アイテムで1000枚は難なくこなせる現場です。ここが崩れる理由。

 

1.デザインの多さ

2.小ロット

3.仕様書やパターンの違い

4.生地・資材の遅れ

5.投入タイミングの一極集中(繁忙期)

6.イレギュラー

 

1.デザインの多さ

今のアパレル業界はシャツひとつとってもまちまちで、細かいデザインがブランドごとに違います。あと素材もかわります。

これらが混在している状況のため効率生産が出来づらく、生産時間が1マーク1000枚のものより時間がかかります。慣れることがないのが原因です

 

2.小ロット

デザインの多さと同じことが言えます。

小ロットであるがゆえに工場のラインに乗って生産効率を上げる方法が取れません。

慣れた頃が生産の終了くらいになります。

あと、1マークなら1回で済む裁断や仕上げの工程が、マーク数分増えます。

当然時間が必要になります

 

3.仕様書やパターンの違い

これは結構あるあるですが、ブランドさんごとに仕様書のフォーマットや記載方法が全く違います。1枚で完結しているブランドさんもあれば4,5枚に渡る仕様書もあります。パターンも同じで、ブランドさんごとに癖や書き込みの仕方など違う部分が多々あります。読み込むのみ毎回違うものを読むので結構な時間を取られます。

※大手の工場と大手のメーカーだとブランドごとに担当が別れたりしますが、すくないので例外とします

4.生地・資材の遅れ

これは工場側ではなくメーカーや生地・資材メーカーに言えることですが、生地や資材もタイミング次第では在庫切れしていたり 仕掛かり中だったりがあるので、それが発生するともうどうしようもありません。下の一極集中にも関わりますし、生地屋さんもブランドが受注会など終わらないと予測で生地を仕込むことが出来なくなっています。

5.投入タイミングの一極集中

多くのブランドが同時に生産や展示会が始まるので、これも完全に原因の一つです。

閑散期に生産回せるものは回す方があとあと楽になります。もちろんブランド側からすれば先にお金が出て行くので気持ちいいものではありませんが受注生産で小ロットであればそこは割り切る方があとあと精神衛生上良いです。

6.イレギュラー

これは不可避なものです。極端にいえば自然災害や人的災害(自殺や病気など)で工場機能が損なわれる場合です。これにかんしては諦めてもらうしかないです。

 

 

このような条件が重なることで本来なら1ヶ月で仕上がりそうな数量がどんどん間延びすることになります。生地や資材の遅れが発生した場合は作業ごと後回しになることもしばしば起こります。

なので納期を守ろうとする現場は 受ける数を減らして単価をUPしていく流れになっているわけです。または投入を早めてくださいと連絡しているはずです。逆に同じ値段のまま受けてくれている工場はだんだん納期がずれてきていると思います。

 

にも関わらず、1マークあたりの数が減っているのに同じコストで生産ができると勘違いされている方が結構おられます。

それを高すぎるという場合は以前と同じ条件で仕事を出せばいいだけです。月産1000枚あげれてたものが500枚になればコストも倍とはいいませんが 上げざるを得ません。

こういう部分で工場も上げすぎるとブランドさんも困るのでギリギリの上げ幅をとっています。ギリギリなので内部留保ができず、吹けば飛ぶような現場ばかりになっているのだと思います。食べるのにやっとです。

 

いまの現場が遅れすぎていると感じる場合

ヒアリングしてみてください

月産シャツなら何枚UPできるのか、だいたいデザイン数どのくらい抱えているのか

それが分かると仕事も出しやすくなるはずです。ああ、これくらい早めに入れておいたほうが無難だな というように。

 

ここ最近納期のずれのお話や、コストが合わなくなったとお話を聞くことが増えました。

原因は必ずあるものです。参考になればこれ幸い

 

 

ではまた