ひろいの徒然ブログ

アパレル生産管理自営の日々や子育て

【ZOZOさんの原価発言を考える アパレル生産管理】お仕事の徒然

おはこん失礼!ひろいです。

 

先日ZOZO前澤さんが結構な発言をTwitterでされたので、ちょっと生産管理として、いままでメーカーや生地メーカー、小売も経験した身として

その発言に対しての見解を具体的な数値を交えて書きます。

 

問題のツイートは消されていますが内容はざっとこういうもの

前澤氏『みなさんは1万円の服が原価2000~3000円で作られていることを知ってますか、ムダを省いてお客様にはもっと適正な値段で買ってもらえるようにしたい』

ZOZOには絶対に前澤友作社長よりもTwitterを休止にした方がいい男がいる(藤田孝典) - 個人 - Yahoo!ニュース

詳しい内容は添付の記事にも記載がありますので参考まで。

この発言で株価は下がり、そのあとにTwitter休止しますの発言で株価持ち直すという わけのわからない現象が起きました。それだけ自分自身の発言が影響を持つことを理解されたということだと思います。

 

今回伝えたいのは

ファッションに関わる商品(今回は服を例にしますが、雑貨や音楽もそうです)は原価だけで商品価値が決まるものではない

ということ。ここを分かってないからこういう発言が出るのだと思います。服の生産をデザインから考える人であれば材料などの費用だけで服の価値を原価で発信しません。簡単に言うと前澤さんは素人ってことです(服に関してはです)。ただ元バンドマンだったはずなので その点でも残念です。

 

そこで誤解を生まないためにも服ができるまでにはどのようなコストが掛かってくるのか書いていきます。僕自身は国内生産なのであくまで国内のコストです。

参考にして頂ければ幸いです

 

仮として

ネルシャツを生産するとします。チェック柄です。

[条件各種]

・生産数 100枚

・サイズ 4サイズ展開 色数 3色展開

・材料関連はメーカー 支給

・生産期間は5人縫製師工場で約1Week

・工員の時給は1000円

・売値は18000円くらいを目指している

と簡単目にしておきます。

 

・工場の原価(あくまで参考です)1着あたり

縫製工賃 3000

裁断工賃 500

仕上げプレス 300

運賃 100

材料費もろもろ(糸や裁断紙など)50

他経費(光熱費や人件費)1000

ざっと分かりやすいところで合計 4950円 約5000円

 

・メーカーの原価 1着辺り

工賃 5000

材料費用(生地・ネーム・値札など・ボタンも)2000

運賃 300

デザインとパターン(自社として)500

サンプル制作費(5着程度) 750

広告費(展示会なども含む) 1000

その他経費(人件費や事務所やもろもろ)プライスレス

ざっと値段がはっきりしないところを除いても 11550円

 

とシャツ1着つくるのにこのくらいコストかかります。

細かいのを除いてますので 本来はもっとかかります。

売値を18000円設定していたらとても利益あがりません。

6550円も粗利あるやん!て思いますよね。

メーカーが次は自社SHOP以外で売る場合(卸ですね)は上代に対して掛率というものがあります。

仮にお店への卸の掛率が60%だとすると

18000×60%なので10800円となり 750円の赤字。。。

とてもやってらんないです。

 

そういう状態になれば本来は上代を上げるとなるのですが、昨今高すぎるものが売りづらいという理由でメーカーさんも上代UPに対しては渋いです。

そこでメーカーは デザインやパターン費用をコストに考慮しない だとか

工場は 工賃を引き下げ依頼を受けて 薄利過ぎる状態の工賃でなんとか頑張る

だとかになってしまうわけです。これは企業努力でもありますが、こんなことを続けていたらみんな疲弊します。

 

本来はブランドとしての付加価値を上乗せして販売して、その価値に共感を得る人が買ってくれる。買った人はそのブランドのもつ【何か】で満足を得る。そのサイクルでファッションは利益を得ることができるものです。ブランドさんは服に付随する何かを販売していく必要があります。

工場は特殊なことができるわけではありませんが技術職です。

それが最低賃金 時給で工賃計算されていることに疑問を持たないといけません。最低賃金は単純作業レベルのものです。もっと工賃に自信をもって その工賃に見合ったものを作れば商品を受け取る人も納得できます。どのくらい工程があるのか知ってもらうことも必要になるでしょうね。

 

 

さて、ここまでのコスト計算があって初めて服の値段や原価は出すことが出来るものです。

ZOZOさんのようなモールタイプの経営者が アパレルの業界の人間として 安易に1万の服の原価は2.3000円です。なんてことを発言するのは 努力しているファッション業界の人間への侮辱と取られてしまうのは仕方がないことです。一括りにしてしまってますからね。

こういう発言をする場合はブランド名を明記して発信していただきたい。

(まあ取引されているブランドさんの中には海外大量生産で労働者や材料費をたたきまくって

1000円のものを10000円で売ってるブランドもあるんでしょうけどね。。。)

 

 

服を創り出すブランドさんも工場も しっかりと仕事をして価値を生み出しているのであれば国内の服は高くて当たり前のモノになります。

みんな厳しくて大変なので 底の方で ぎりぎりを這いつくばって頑張っている。この現状をいろいろな方法で打破したく 僕ら現場サイドも努力と発信を続けないといけないと考えさせられます。

 

最後に ZOZOさんは影響力を持っている会社です。

無駄のカットやいろいろな事を今後やっていかれると思います。その活動が業界にいい刺激を与えてくれるようなものであると期待します。影響力を正しい方向に向けてもらえれば業界の後押しや応援も増えていくと思うし、僕も小さいながら応援したいと思いますし。

 

 

それでは長くなりましたが、お付き合いサンクス!

ではまた。